寄り道 Side:青峰 01

「コピーもすんだし、オレは帰るわ」

6人で写真シール機で写真を撮った後、青峰はそう切り出した。
黒子と2人で帰ろうとする桃井を邪魔するつもりで一緒に付いて来たものの、このままだと黒子と2人きりになれない。
とりあえずは、まずは邪魔な黄瀬、紫原、緑間の3人を追い払いたい。
黄瀬は帰れと言っても帰らないだろう。
紫原と緑間も下手に帰そうとして、探りを入れられても困るので、まずは自分が口火を切って、解散へと水を向ける。

「オレも帰って勉強しなくてはいけないのだよ」

すると、思った通り、緑間も帰りを口に出した。
でも、本当は帰りたくないのがアリアリだ。
黒子から離れて帰るのが嫌で眉間に皺が寄っているのを眼鏡のフレームを直す振りして隠している。
「そうだ。そうだ。早く帰れ」と心の中で念じる。

「じゃあ、バイバーイ」

緑間の言葉を聞いて、何かを考えた風に少し黙った紫原もあっさりと手を振って帰って行った。

「お前はどうするんだ」とばかりに黒子に引っ付いて帰りそうにない黄瀬をちらりと見遣ると、不思議そうな顔で見返された。

「どうしたんスか?」

「帰るんじゃなかったんスか?」と目が雄弁に語っている。
両ポケットに手を入れて、小首を傾げている姿もモデルというだけあって、サマになっている。
横を向いて、「ちっ」と小さく舌打ちして、黄瀬の背後に目を向けると、女の子が数人固まって話しながら、時折、黄瀬を指差しているのに気が付いた。
周囲に注意を払って見回すと、他にも女の子のグループが複数固まって、ちらちら、黄瀬を見ている。グループの中で互いに押し合っているのを見ると、誰が黄瀬に声を掛けるのか押し付け合っているらしい。

(ふーん、そういうことね)

青峰はニッと口の端を上げると、黄瀬に向かって片手を上げた。

「いーや。何でもねー」

そう言って、黄瀬たち3人に背を向けた。
女の子の集団を見たところ、一緒に写真を撮って欲しいと黄瀬に声を掛けるのは時間の問題だ。
後は心配しなくても、黄瀬の足止めは女の子たちがしてくれる。
青峰は安心して、ゲームセンターを出た。

「人気者は辛いな、黄瀬」

くくっと喉の奥で笑う。
問題はこの後だ。
どうやって、合流して黒子と二人きりになるかだ。
桃井は赤司に黒子を家まで送り届けるよう言われたと言って、引き離すのは簡単ではなさそうだ。

(ん)

青峰は黒子の帰宅途中にバスケットゴールがあることを思い出した。
今日、黒子は赤司に言われて、基礎練習しかしていない。
あのバスケ大好き少年の黒子がボールを触らずに一日、過ごすのは難しいだろう。
帰り道、我慢しきれなくなるのは想像に難くない。

(あいつのことはオレが一番分かってるし)

黒子の相棒である自分が一番、行動パターンを知っている確信を持って、青峰は薄く笑った。
少しどこかで時間を潰してから、ちょうどいい頃合いに合流するか。

(さて、どこに行くかな)

2013年7月27日

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