寄り道 Side:黄瀬 02
一番最後にやって来た桃井は黒子と二人きりではなかったことに、露骨にがっかりした顏をしたが、黄瀬にとっては、大人数の方が桃井を撒き易いので大歓迎だった。
はぐれたふりして、途中で黒子と二人で消えてしまえばいい。
桃井が皆に一緒に帰る理由を聞いていたが、青峰はテスト対策に桃井のノートコピーのために一緒にコンビニへ、紫原もとりあえずコンビニへ（たぶん買い食いだろう）、緑間は気が変わったので途中まで、というのが理由なのだそうだ。
赤司は全員揃ったところで、「寄り道するな」とだけ告げてさっさと帰ってしまった。
真直ぐ帰るのは避けたいと思った黄瀬は寄り道を提案するが、赤司に寄り道させないように言いつけられた桃井はきっぱり拒否の姿勢で、このままではコンビニにすら寄ることは叶わなさそうだと思っていると、黒子が加勢してくれた。
「桃井さん、ボクにもノートをコピーさせてもらえませんか？」
黄瀬には黒子が天使に見えた。（いつもだけど）
とりあえず、コンビニに向かうことにはできたけど、コンビニに行っただけで解散となっては上手くはぐれることができない。
向かう途中で、黒子がまいう棒の新作をゲーセンで見つけたという話題から、ゲーセンに寄ってみることを提案してみたが、これ以上寄り道したくない桃井に却下された。
コピーを取りたい青峰、他のお菓子を買いたい紫原も同様。
皆、コンビニがご所望のようだ。
ゲーセンは却下されて、予定通り、コンビニに向かうこととなった。
（困ったっス）
「このままだとコンビニで解散ということになってしまう」とコピー組とお菓子組がコンビニに入る中、黄瀬がコンビニの外でどうしたものか考えていると思いのほか早くに青峰達が出てきた。コピー機は用紙切れらしい。
程なくして、黒子達、お菓子組みも新作が見つからなかったと言って出てきた。
桃井は仕方がないから帰ろうと主張したが、ノートのコピーが必要な青峰は諦めたくなさそうだ。
近場のコンビニのコピー機も同様にこのテスト時期、既に用紙切れになっているのは想像に難くなく、皆でどうするか話していると黒子がぽそっと発言した。
「ボク、ちょうどいい場所を知ってますよ」
この一言でコピー組みもお菓子組みも黒子の言う穴場のゲーセンへと向かうことになった。
（グッジョブ、黒子っち！）
余計なお邪魔虫達はいるものの、意識から締め出してしまえば、黒子と二人でゲームセンターにデートに来ていると思えなくもない。相当苦しいけど。
コピー機に貼り付き状態となった青峰と緑間は心置きなく放っておいて、黄瀬達はまいう棒の新味が景品になっているというリズムゲームのD・D・R（ダンス・ダンス・ルンルン）のところへやって来たが、初挑戦のD・D・Rには惨敗だった挙句、コピー能力を最大限に発揮してせっかく高得点を取ったものの、今度は高得点過ぎて、景品がまいう棒から他のものに変わってしまった。
せっかく黒子にいいところを見せたかったのに、全く努力が報われない。
その後も黄瀬が景品を取りに行った際に、女の子たちに捕まって、大量の写真シールを撮っている間には、高校生に絡まれた桃井を助けようと黒子が危ない目に遭っていたりと、碌なことがなかった。
（そろそろ黒子っちと離脱したいっス）
写真を緑間に見せながら、黄瀬はそんなことを思っていたが、せっかくなら黒子と写真を撮りたい。
二人で撮りたいのはやまやまだが、それは次回の楽しみに取っておいて、まずは黒子の写真を手に入れたい。
桃井の話に合わせつつ、自然を装って皆で写真を撮ろうと提案すると、思った通り、桃井以外の皆の反応は芳しくなかった。
「えっ！？」
「はぁ？」
「えー･････････」
「なにを考えているのだよ」
「黄瀬君、すごいですね」
（黒子っちまで）
脳内補完するとこんな感じ。
2013年7月10日
