再会 09

そのまま時間が過ぎること少しの間。恐らく、1分も経っていない。しかし、アッシュとようやく会えたことを英二は噛み締めていた。
一方、二人に存在をまるっきり無視されていたシンはしばらくアッシュに殴られたまま地面に座って、二人を見ていたが、段々面白くない顔になり、遂に

「あのさー、いつまでそうしてるわけ?二人ともオレがいるのを忘れてない?」

と邪魔をした。
シンの声にはっとした英二は急に顔を赤くすると両手をぱっと離して、アッシュから離れようとしたがアッシュが離さない。
むしろ離れようとする英二をより一層抱きすくめ、ぎゅっと抱え込むと英二の肩越しにシンを見て、にやっと笑った。

「なんだ、まだいたのか?お子さまはもう帰ったのかと思ったよ」

ストリートギャングのボスのアッシュでは決して見せることのない顔。意地悪そうに、でも楽しそうにシンを攻撃する顔は歳相応の青年が友達に見せるような顔だ。
「邪魔するな」と言わんばかりのアッシュにシンは地面に座ったまま叫んだ。

「いい加減、英二を離せよっ。だいたい、あんた、英二とはもう会わないんじゃなかったのかよっ」

アッシュは「ふふん」と鼻で笑い、

「英二が襲われていたら、いつだって現れるさ。それに、事情が変わったんだ。泣く英二には誰も勝てないさ。お前も・・・そう思うだろう、シン?」

“お前も”のところに不必要に力を入れて、アッシュが余裕の笑顔でシンに告げる間、英二は「あの」とか「その」とか言いながら、アッシュの腕の内から離れようともじもじしているがアッシュがそれを許さない。

「おっ、襲われる!?」
「お、襲われた!?」

と思わぬ攻撃をされて、シンの声が裏返ったのと同時に英二の声もシンにシンクロした。

「お・・・お・・・襲われたんじゃなくて、ぼくが取り乱したから、とっさに出た行動だったんだよ。落ち着かそうとしたら、たまたまぶつかったんだよ!な、何を言ってるんだ、アッシュ!ね?ね、そうだよね、シン?」

勢いよくアッシュを突き飛ばしたと思うと、英二がシンを振り返り同意を求めた。

「・・・・・。・・・・・そうだよ」
(こんな状況で“気になる”なんて雰囲気も何もあったもんじゃない)

「ふうん。そういうことにしておこうか」

にやにやと口元に笑みを残したままアッシュが言った。そして、シンに歩み寄ると右手を差し伸べ、シンを立ち上がらせた。
シンは両手で尻の辺りを掃って立ち上がった。そして、立ち上がった途端、目に入ったビルの時計を見て叫んだ。

「あーっ。こんな時間じゃないか!ユーシスにディナー前には帰ってくるように言われてたんだぜ!」

小さい声で「やばい」「怒られる」と言ったと思うと、アッシュと英二を急かし始めた。

「若様んところに戻るぞ!あいつ、時間にはうるさいんだよ。ほら、行くぞ!」

シンはそう言うと背中を向けて歩き出た。シンを追うようにしてアッシュも歩き出すと、英二を振り返って、優しく笑った。
英二がアッシュの澄んだグリーンアイズじっと見つめると、アッシュの目は甘くきらめいて、英二を見つめ返した。

「なんだ、オニィチャンは手を引いてもらわないと歩けないのか」
「なんだよ。さっきまでは殊勝な態度だったのに、もうこれかよ。さっきまでの君はかわいかったのにな〜」

甘い雰囲気が漂ったのも束の間。アッシュの減らず口に英二が言い返すといったいつものやり取りにアッシュは心地よさを感じ、英二に聞こえぬように小さく息を吐き出すと英二に言った。

「早く来いよ」

英二も「ちぇ」と言いつつも嬉しそうな顔でアッシュの横へと追いついた。

まったく英二には敵わない
もう二度と英二には会わないと一大決心した自分がバカみたいだ
たった一月前に自分がいったいどんなめに遭ったのか覚えてないのだろうか
しかし、いくら会わない決心をしたとしても、このとても年上に見えない童顔の男は自分から来てしまうのだ


「しかも隙だらけだからな。放っておけないだろう?」
「ん?なんか言った?」
「いや。なにも」

アッシュは口元で優しく笑った。


END

いや〜、ようやくなんとなく終わらせることができました(^^)
こんなに長くなるはずではなかったのですが(^^;)

自分の萌えるシーンをてんこ盛りにしようとすると繋がりがおかしくなったりして、試行錯誤してここまで書けましたv(^o^)v
じれったかった方、すみません。
納得いく終わりになってたでしょうか。

連載当時、衝撃のラストで立ち直れなかった方も多数だと思いますが私もそうでした。
英二のように、最終話はずっと封印して、極力読まないようにしてました。
でも、「うらBANANA」でアッシュと英二が出てたみたいに、原作本編のラストも二人が演じたストーリーの一つって、思い込むことで少しは緩和されたかなぁ。

とうまくまとまりませんが、ここまで読んでくださった方ありがとうございました(*^^*)

もう少し書き切れなかった部分をサイドストーリーとしてだらだらと更新できたらいいなと思います。

重ねてありがとうございました♪

(2012年5月15日コメントから)

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