再会 03
「アッシュの意識が戻ったって!?」
騒がしく入ってきたのはショーターの跡を継いでチャイニーズのボスとなったシン・スウ・リンだった。
ユーシスは眉を顰めてシンに注意した。
「シン。何度も言っているように、部屋に入るときには・・・」
ユーシスが全てを言い終わらぬうちに、ベッドの上のアッシュに気が付くとシンはアッシュへと走り寄り、アッシュの胸元に顔を埋めるような形で抱きついた。
「っつ」
思いきり飛びついてきたシンの衝撃に思わず声が漏れる。
アッシュの漏れた声にも全く気付かぬ様子で、シンはアッシュの胸元に顔を伏せたまま声をあげた。
「オレ、あんたがほんとに死んだと思って・・・!オレの持って来た英二の手紙のせいだと思って!もう起きないんじゃないかって思って・・・!」
と言って、アッシュの怪我を忘れているのか、心もちシンのアッシュに抱きつく腕に力が入った。
アッシュは今度は声を出さずに眉をしかめるとシンの両肩に手を置いて、シンの体を押し戻し、自分から引き離すと憮然とした様子で言った。
「・・・・・重い。まず、オレの上からどいてくれ。男にのしかかられるのは好きじゃない」
顔を上げたシンの目には涙が滲んでいたが、一瞬、何を言われたのか分からない顔をして、その後、しばしアッシュの顔を見つめると今度は怒り出した。
「の、のしかかる・・・って!そんな言い方ないだろう!?あんた、本当に変わらないな!本当に心配したんだぜ!?手術はうまくいったと聞いたのに、あんた、1週間も意識が戻らないから・・・」
(泣いたと思ったら、怒り出した。忙しい奴だ)
とアッシュは内心思ったものの、シンの最後の言葉を聞きとがめた。
「“1週間も意識が戻らない”・・・?刺されてから1週間も寝てたのか?」
シンが部屋に入ってきたことで話を中断された形となったユーシスはアッシュへ飛びついたシンを見て、鼻を鳴らした後、腕組みをして二人の遣り取りを馬鹿馬鹿しそうに見ていたが、シンの言葉に少し目を見開き、聞いてきたアッシュに意地悪そうな顔で嬉しそうに答えた。
「そう、君は1週間の間も昏睡状態だったんだよ。搬入直後は心肺停止もしていたしね。一時は、本当に危ないと思ったよ。あの傷で持ち直すんだから、たいした生命力だ。やはり野生の山猫だからなのかな」
「これ以上、意識が戻らないと、もうこのままかもしれないって言われてたんだぜ」
シンはアッシュの応対をまだ不服に思っているのか頬を膨らませつつも、ユーシスの言葉に同調した。
ユーシスの言葉の通り、暫く寝たきりだったことを示すかのように、確かに全体的に筋力が落ちているのか、力が思うように入らない。
しかし、李家の手厚い保護によるものなのか、以前、オーサーとの決闘で刺された直後の傷よりは痛みも少ないようだ。
「・・・・・・・。」
自分がアッシュを助けたこと、刺された後にアッシュが1週間も昏睡状態だったことなど、アッシュが知らない事実を突きつけて、口の減らないアッシュを黙らせるのはユーシスにとって非常に楽しい状況だ。
押し黙ったアッシュを満足そうに見遣り、薄く微笑みを浮かべて、告げた。
「1週間ぶりに起きた王子様に素敵なプレゼントをやろう」
これから自分が言う言葉がアッシュに対して動揺をもたらす言葉だと知っているユーシスは優越を感じながら、一旦、言葉を切り、口の端を上げて言った。
ちっとも進まないですね(^^;)
(2012年4月10日コメントから)