Secret present 01

晴れ渡った青空の下、公園内の中央に位置する噴水そばに停められた移動式のサンドイッチの店の前でトッピングが並べられたガラスケースの前で金髪の頭と黒髪の頭が仲良く並んでいる。
「うーん、どうしようかな。チキンも入れたいし、でも、エビとアボカドも捨てがたいな」
「おい、まだ悩んでいるのか?」
「君はもう決まったの?」
「とっくに決まってるさ。英二が玉ねぎ入れるかどうか悩んでいるあたりで」
「やっぱり、玉ねぎも入れた方がいいかなぁ。でも、臭くなるかなぁ」
「おい、また戻ってるじゃねぇか」
ベースとなるパンの種類を決めて、挟む野菜を決めて、トッピングを決めてと選べる種類があるだけに何を入れるか英二は先ほどからずっと決めかねていた。
「英二、いい加減決めて、早く日陰に行こう・・・ぜ」
「私はローストビーフが入ったやつがいいな」
アッシュの催促する言葉が終わりきらぬところで、店のガラスケースを覗き込んだ二人に大きな影が差し掛かり、声が急に割って入っきた。
気配も感じさせずにいきなり背後に立たれたことで、反射的にアッシュはシャツの内側にしまい込んだ銃に手を掛け、勢いよく振り返る。
「!」
「そんなに毛を逆立てなくても」
右手を出さないうちに大きな手で押さえられた。決して強い力ではないのに銃を抜こうとした腕が動かない。
「・・・なんでここにいる」
思いもかけない顔を目にして、暫し言葉を失った後、ようやく言葉を絞り出した。
アッシュが相手の顔を認識して銃に掛けた手から力を抜くと相手もようやくそっと手を放してくれた。
「やあ」
親しげな笑顔を向ける相手の顔とアッシュの顔を交互に見遣り、英二はアッシュのシャツの裾をそっと引っ張った。
「アッシュ、この人・・・」
「また会ったね、英二くん」
男は英二の目線に合わせて大柄な体をかがめ、穏やかな笑顔を向けてくる。
「無視かよ!あんた、こんなところで何やってるんだよ!」
「あの・・・あのときの」
英二が以前の記憶を辿りつつ、上目遣いに男の顔を見るとにっこりと一層の笑顔を見せてくれた。
「“白”です」
「ブランカ・・・」
英二が視線を下に向けて、名前を反芻するように口にしているとアッシュがブランカの肩をつかんで、自分の方へと体を向けさせた。
「だから、無視するなって。あんた、なんでここにいるんだよ!?」
不機嫌さを隠そうともせずにアッシュは先ほどから与えられない答えを求めて、再び問い質した。
「すぐにカッとなる癖は治らないんだな。そんなに警戒しなくても、ビジネスで来てるんだよ」
「“ビジネス”?」
「ビジネス」という単語にアッシュは敏感に反応して、左手で英二を自分の背後に押しやりながら、眉尻を一層吊り上げた。
「あぁ。そっちじゃない。私だって普通に仕事を持っているんだ。そんな、英二くんを私から離そうとしなくても大丈夫だ」
ブランカは頬に掛かった黒髪を軽くかき上げて穏やかにほほ笑む。
「どうだか。英二、さっさと決めて、早くここから立ち去ろうぜ」
ブランカに敵意がないと判断したアッシュはこれ以上話すのは時間の無駄だとばかりに英二の肩を抱き、くるりと体の向きを変えて、再びガラスケースへと向き直る。
「アッシュ、いいの?」
「いいんだよ。もう、オレが決めてやる。エビとアボカドと」
ほっそりと長めの指を立てて英二の分までオーダーし始めたアッシュに並びながら英二はブランカの存在を気にして、ちらちらと振り返っているとブランカはアッシュと英二の肩を抱いて、二人の間にぐいっと顔を入れて白い歯を見せて笑った。
「私にはそこのローストビーフを入れてくれないか」

2018年8月4日

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